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【書評】Facebookは何を解決しているか、とか、個人情報は誰のものか。とか。テクノロジー思考 レビュー

2020年3月9日

スルメのような本。

ありきたりな表現だけど、そうそう出会うもんじゃない。特に実用書の分野においては。事実、僕は、スルメのようなビジネス書に出会ったのは、これが初めて…かもしれないです。覚えている限りでは。

どういう本なのか

本のタイトルから誤解してはいけません。テクノロジーについての本じゃない。世の中、特にここ最近の情勢を、テクノロジーという要素を考慮してみると、今までとは違う見方ができる。そういった視点から、さまざまな世情を切り取って説明してくれている本です。ものすごく納得感がある。そうか、そういう観点から説明するときれいに筋が通るんだな、という感じです。
逆に言えば、いまのニュース解説からすっぽり抜け落ちている視点、でもあります。

例えばアメリカが主導しているファーウェイ排除の問題。あそこまでする必要があるのかな?ちょっと理解に苦しみます。ファーウェイの機器にはデータを盗聴できる仕組みが仕掛けられてるとか、確かにちょっと心配だけど、陰謀論っぽくもありますよね。
これを普通に僕らの視点で見てると、「アメリカが、自分ところのビジネスを維持するために難癖付けてる」みたいなイメージになっちゃいます。ガキ大将がゲンコツ振り回してるみたいな。それも間違いとは言い切れないけど、なんか、すっきりはしないですよね。あそこまでやるでしょうか?
この本によれば、ファーウェイ排除、実は盗聴を防ぐためじゃないんです。もっとぐーーっと引いて、歴史とか、文化とか、もちろん経済とか、そういうものを含めたうえで、テクノロジーを軸に考えると、「あー、そゆことか」ってわかります。

ものすごいいテキトーな言い方をするなら、「テレビを見てる人にとっての池上彰さん」みたいな本。歴史、文化、宗教、地政学とかそんなのを踏まえて、テクノロジーを通して世情を見る。テレビを見てる人にとっての池上彰さんが、ビジネスマンにとっての蛯原健さん(著者)になる、ということなのでしょう。

わかります?

すんません、抽象的過ぎますよね。でもそうとしか言いようがないんです。

読めば読むほど面白くなる本

偉そうに書いているけど、僕も一発で理解できたわけではないです。この本、最近のビジネス書には珍しく、文章が固い。飲み込みにくい。一度さらりと読んだだけでは、わかったような、わからんような。でもなーんか面白いし、おぼろげに、大事なことを言っているような気はします。

仕方ないので、二度目を読むわけです。

それで驚いた。初めて読んだ時よりもさらに面白い。

二度目だからか、少し引いた目線で読むことかできて、世界にピントが合ってくる感覚を覚えます。言い換えるなら、この世界を横目に見ながら、「あー、こういう世の中の流れをこんな風に分析してるのね」とわかる感じです。

読めば読むほど、マーカー引く部分が増えていく。面白さが増していく。もう4度ほど読みました。短期間でこんなに何回も読み返した本は初めてです。

例えばこんな内容です 

これ以上うまく表現できないので、あとは僕がぐっと来た内容の一部を、箇条書きで紹介しておきます。

・個人情報は誰のものか

・データってのは現代の石油

・データの奪い合いで冷戦が起きる

・再び人口が競争力になる時代がやってきた

・Facebookとは、暇と孤独への解決策

最初のやつ、個人情報は誰のものか、ってところだけ、ちょっと引用しておきますね。

私にもあなたにも名前はある。住所も、年齢、職業、肩書もある。しかし、それらは他者に認識されてはじめて存在しうるものである。個人の胸に秘めておいていたのでは何の意味もない。(中略)個人データとは誰のものかと言う問いを突き詰めると、誰のものでもないというのが正しい答えとなる。(中略)
個人データが誰のものでもないとすれば、あるべき議論は、それをどう管理するかのルールを決めること、論点はこの一点でしかない。

どうでしょう。僕には、ちょっと目からうろこでした。

役に立つのはもちろんだけど、もう純粋に、面白いから勧めたくなる。そういう本です。ほんと面白いですよ。おすすめ。

photo credit: Hindrik S Resting in a Trap via photopin (license)

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