書評 考察・意見

なりたい自分になれないのは、未来の自分を雑にイメージしてるから。リスキリングにも効く、Think Futureレビュー

少し前、こんなCMがあったの覚えてますか。父子が、アウトドアで焚き火でもしながら、くつろいで会話するシーン。

父「お前は将来、何になりたいんだ?」
子「〇〇になりたい!パバは?」
父「えっ…」
子「パバの将来の夢は何?」

子供の無邪気な質問から、まだ将来があるなんて考えてもいなかった自分に気づく父。星空を見上げ、もう一度夢を持とうと考え始める…。

みたいなやつ。そんなお父さんにピッタリの本を読みました。

どんな本か

簡単に言えば「未来の自分をもっとリアルにイメージすれば、いろいろ、うまくいくようになるよ」という本です。ダイエットや禁煙に失敗したり、貯金したいのにできなかったり、先送りグセのある人に効く本です。さらっと読む限りでは、ね。

しかしちょっと待って欲しい。そんなちっさいことだけに関する本だと解釈しては、読んだ時間がもったいない。

実はこの本、「将来の理想を実現するためのコツ」と、「ダイエットしたいのについ食べちゃう、をやめるコツ」は、根っこが同じなんだ。という話なのです。どちらも「未来の自分を正しくイメージするのって難しい」という人間の性質に根ざしてるんですね。

なぜ難しいかと言えば、「いまの自分の状態や感覚が、ずっと続くように感じる」から。頭では分かっていても、真冬に夏服選ぶのって無理じゃないですか。ランチをお腹がいっぱい食べた直後に、晩ご飯のメニューを決めるなんて無理だし。

でも、そういう癖があると分かっていれば、対処のしようがある。半年後に取りたい資格があるなら、半年後の試験直前をリアルにイメージする。そしたら今日の勉強をサボる気がなくなる。
3年後に転職したいなら、今日何をするのか。単に計画立てるのとは、また違うんです。計画立てる人は多いけど、実行できる人は少ない。実行できるできないの違いは、意志の強さじゃなかった。もちろん意志の強さも影響するけど、未来の自分をどれだけリアルにイメージできるかなんです。計画倒れの人だって、試験前日はさすがに勉強するでしょ。意志の強弱関係なく。どうやら、そういうことなんです。イメージ不足。

なるほどね~、その視点はなかった。

未知の世界でもそれなりに準備するには

ここで思い出すのが、野球のイチロー選手です。

イチローが大リーグに行ったとき、インタビューを聞いてとても驚いたのを覚えています。行ってみたら、球団が用意してたユニホーム、ズボンがパツパツだったという話。なぜなら、シーズンオフに筋トレを強化して、体をひと回り大きくして行ったから。

いちシーズンの試合数が日本より多くて、パワーもスピードも上の大リーグ。それをリアルにイメージして、的確な準備をしたってことですね。だからこそ、活躍できた。未知の世界をイメージして正しく準備していくなんて、なんでそんなことできるんだ?さすがイチローだな。と当時は思ったものです。

でも違う。試合数が多い、パワーもスピードも上、なんて、誰でも知ってる情報です。あの時代でも、ケーブルテレビで海外の試合は観れたでしょ。
それらの情報を、今の自分として受け取るんじゃなく、情報をもとに、大リーグでシーズン終盤まで過ごした自分になりきってみた。そしたら、「あ、このままの体格じゃしんどい」て分かったということなのでは。推測だけど。

なりきって考えるだけなので、やろうと思えば、僕ら凡人にも半分くらいは真似できる、てことなんですね。僕らは、未来の自分になってみようとしないだけなのです。

GROWモデルで捉えなおす

さて、再び一般論に戻ります。人材育成のGROWモデルてご存知ですか。こんなやつ。

なりたい自分は、今の自分の、斜め上にある。でもこのまま行ったら、自分は水平にスライドするだけ。このまま行った時と、斜め上に行った時のギャップを正しく把握しようね。という図です。

でね。この本が言ってることって、GROWモデルで考えるとわかりやすいのです。

普通は、現状に立って、未来を仰ぎ見る。でもそれでは上手く行きにくい。なぜなら、水平のベクトルがめっちゃ太いから。そういうもんです、人間だもの。図で書くとこうです。

だから意識的に未来の位置に立って現状を見るのです。その時、完全に未来の人になりきるのが大事。今の自分や今の条件、状況に囚われないように、幽体離脱して、未来に飛んでいくイメージ。図で書くとこういうことです。

未来は、できる限り細かく具体的にシーンをイメージする。打ち合わせしてるところ、手を動かして何か作っているところなど。そうすると、ギャップややるべきことが明確になってくるし、一歩ずつ進めていく気にもなる、というわけです。

本書も、洋書の例にもれず、心理学の実験をもとにああだったこうだったとグダグダ続きますが、そんな部分は斜め読みで十分。本の前半で、ここまで私が書いてきたようなことを読み取れるならば、得るものはあります。かなり能動的に読まないとイカンですが。

そんなわけで、万人におすすめとは言い難い本ですが、「未来の自分をリアルにイメージすることで、目標達成を成し遂げる」という考え方が気になる方にはおすすめです。未来の自分にメールを書くとか、未来の自分から今の自分にメールを書くとか、イメージの助けになるような小技もちょいちょい載っています。リスキリング、いまいちやる気にならなかったけど、イメージが足りなかったんだな。

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