
部下を教える立場の人。子供を育てる立場の人。日々悩みますよね。これでいいのかどうか。
教えるなんて、いつまで経っても慣れやしない。だって教える相手によって教え方は違うんだもの。
そんな私と皆様に、良い本を読みました。
どういう本か
もう、タイトルの通りです。ティーチングよりコーチング、ってよく聞きますけど、答えを教えるほうがよほど楽。だけどそれでは、教える相手が成長しない気がする。どうしたらいいのだ。
そんなお悩みに、誰でもできそうなやり方で、「答えを教えない教え方」を示してくれる本です。
要は、生徒が自分で、自分なりの答えを見つけるように導く方法。そのためには、答えではなく「問い(お題)」を与えること。
その「問いをどう作ればいいか」が分かりやすく、実践しやすく書かれています。
「この人にどう教えたらいいのだろう」って悩んだことある人には、とても沁みる本です。
教えずに教えるには
ここからは、本書に書いてある通りではなく、私の個人的な解釈が多分に含まれますが・・・
まず、答えを教えるのってめちゃ簡単なんです。答えを言えばいいんだもの。極端に言えば、相手が理解できてるかどうかはあんまり関係ない。
「知った」「わかった」「できた」それぞれは全然違う、ってよく言いますよね。
答えを教えるには、先生はただ答えを喋ればいい。ただその段階では、生徒側は「知った」にしかならない。
そこから「わかった」に持っていくには、生徒が自分の中で、今まで知っていることとつながって腹に落ちることが必要です。そのために、教える側は言葉の難易度を変えてみたり、例えを変えてみたり、Youtubeを見せてみたり、本を与えてみたり。ちゃんと「わかった」まで持っていこうとすると、教える側もそこそこ大変です。「できた」まで持っていくには、さらに大変。
では、答えではなくお題を与えるやり方ならどうなるか。
「これができるにはどうしたら良いか?」という骨組みでお題を与えるのです。つまり最初から「できる」をゴールに置く。
「知る」はその第一歩にすぎず、知識を活かして試行錯誤するうちに「わかる」になり、「できる」へたどり着く。
マンガ「アオアシ」の中でも、主人公が「あの時、言われたのはこういうことだったのか!!」と気づき、急にできるようになる様子が何度も描かれます。
うまいやり方ですね。
なにより、普通の教え方とは組み立てが逆 というところが目からうろこです。「できる」を最初からゴールに置く。
しかしそもそも、これは生徒が能動的でないと機能しません。やる気にさせるのって、めっちゃ難しいですよね~。
「まずお題に取り組みたくなるにはどうしたらいいか」も本書では解説されていて、ためになりましたが、ここでは割愛します。
生徒が迷走しないために
教えずに教えるには、お題を与える。それだけわかっても、手放しでは「見当違いの学びを得てしまう」心配はありますね。いつになったら答えをつかめるかもわからないし。
そこで大事になってくるのが、お題の設計です。
私が特に良いなと思った点は以下ふたつ。
- 変数(いまより難易度が上がる要素)はひとつにしぼる
- 出題者が思う正解はお題の制約条件にする
ひとつずつ、もう少し詳しく書いてみます。
変数はひとつに絞る
理科の実験でよくありますよね。あさがおの葉っぱにでんぷんができるのは、何が影響しているか?
これ調べるのに、まったく同じ条件の鉢植えをふたつ用意して、片方の葉っぱだけアルミホイルに包みませんでした?
アレですよ、アレ。
つまり、新しいことができるようになる お題を与える際に、ほぼ全部、今までと同じ条件にして、ひとつの要素だけ難易度をあげた状況を与えるのです。これがお題設計のポイント。
ところが、ほとんどの人は、多くの要素を一度に変えた条件を与えてしまう。
アオアシの中でも、出てきます。海堂というお嬢さんが、主人公に「首を振って周りを見る」ことを教える場面。
- 最初は、エース 栗林選手の真似をしろ と教える
- 主人公が見当違いの真似を経た後気づき、 真似るのは首振りだ と伝える
- 首振りの練習方法を具体的に教える
どうでしょう。みなさんも思い当たりませんか。普通、こうですよね。最初は自分で考えさせようと、ふわっとした課題を与え、うまく学んでないようなら、少しずつ具体的・細かいところへ口を出していく。つまり、まったく新しい条件に放り込み、徐々に条件を絞り込む。大きいところから、小さいところへ。
ただこれだと、迷走も起きやすい。できれば、迷走じゃない試行錯誤をさせてあげたい。
正解はお題の制約条件にする
ではお題を与えるやり方ではどうするか。私の解釈ではこんな感じです。
- 「現状」から「できるようになる」への要素を因数分解する。
- 要素のうちひとつだけをレベルアップした環境を作り、お題として与える
- お題がクリアできたら、要素を増やしたり、難易度をあげたりしていく
というわけで、前述の方法と逆なわけです。ここでも。最初は絞って、徐々に広く。
ただし、ひとつ問題があります。出題者が「できるようになる」要素にどのようなものがあるか、わかってないといかんのです。
これけっこう難しい。
例えば企業相手の営業さんでいえば、「受注をとってくるようになりなさい」じゃなくて、
・予算をしっかり聞き出す
・決裁権がある人は誰なのか、把握する
・いつ必要なのか、本当に今年度なのか
・・・などなど、ゴールに至るための要素を、出題者が網羅して理解してないといけない。
こう考えれば、あなたにも「正解をお題に制約条件として盛り込む」ことができるようになる。
というわけで、ここまでわかったら、自分にもやれる気がしてきます。教えない教え方。ぜひやってみましょう。
この本、おすすめです。