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価値観が変わるほどの若者トリセツ。「先生、どうか皆の前でほめないで下さい」レビュー

この本を、読みました。結果、採用面接官や、新入社員の面倒を見るすべての社会人に、すすめたい。

なんだこりゃ。ずいぶんひねったタイトルだな。と思うでしょ。ところがこれ、まさかのそのまんまタイトルなのです。どうやら今の学生は、いままでのどの世代よりもかけ離れた感覚や行動特性を持っているっぽい。「最近の若者は…」という言葉は大っ嫌いなのですが、今の若者はこんな風なんて。こりゃ本で教えてもらわないと、想像すらつかないです。

どういう本か

さらさらっと読めて、最近の若者の行動特性がなんとなくわかります。「何をどう感じて、だからどういう行動を取るか」ということですね。
この本だけで分かった気になるのは危ないけれど、さらさらっと読むだけでインパクトがあって、知らなかった世界が見える。若者の行動を知る第一歩としては十分です。

人間ってこうだよね、という共通認識って、あるでしょ。褒められたら恥ずかしいけど嬉しいとか、他人より頑張ったら、その分報われないと納得いかないとか。
ところが、違うらしいんですよ。
いまの学生は、この本のタイトル通り、みんなの前で褒められるとめちゃイヤだと感じる。
褒められなくても、例えば「授業で当てられて、スラスラと答える」なんてことすら、イヤで避けるそうです。わざと分からないふりをするとか。
大学の先生からしたら、面倒くさくてしかたないですね。

とにかく横並びが良い

まあしかし、褒められるのがイヤだという感覚は、まだわからなくもない。ところがですよ。もっとも分からないのはこれです。

あなたはどれがもっとも公正な分配方法だと思いますか?

1. 全員に同じように分ける
2. 必要な人に多く分ける
3. 成果を出した人に多く分ける
4. 頑張った人に多く分ける

何を、どういう集団に分けるんだ という疑問はあるでしょうが、一般的な話だと思ってください。
我々おっさん世代だと、2,3,4のどれかだなあと思うでしょ。ところが、アンケートを取ると、1と答える学生が半数ちかいそうです。
自分が頑張った人であっても、成果を出した人であっても、みんなより多くもらうなんてまっぴらだ、というわけです。
どういうことなんだこりゃ。

究極のお人よしなのかな、という仮説しか思いつかないわけですが、どうやらそういうことでもない。
お人よし要素はおっさん世代よりずっと強くて、性格も良くなっていると思いますが、それよりも、「自分だけ得するなんてイヤだ」ということのようです。
さらに突き詰めれば、「自分だけ得することで周りからどう思われるかが怖い」。

なるほど。わからなくもない ところまで来ました。そこまで恐れるか、という度合いの違いはあれど、「周りからどう思われるか怖い」というのはありますよね。若い時ほど。

その他にも、若者についてこんなことが書いてあります。

  • 自分では決めたくないが、他人に決められたことは頑張る
  • 何を買うかは、インフルエンサーに決めてもらう
  • 自分の提案が採用されるのが怖い
  • あいまいな状況では動けない。例題があれば動ける。

そうなったのは誰のせい

こうやって紹介していると、今の若者をバカにしてるような文章になってしまいますが、決してそういうわけではありません。
結局、若者はいまの世の中に適応しているだけ。そんな世の中にしたのは誰なんだ?上の世代でしょ。というわけです。

頑張った結果、多くを手に入れただけの人ですら、やっかみをぶつけて引きずりおろそうとする大衆。
挑戦者を応援すると言いながら、自分の価値観に合わない「出る杭」は批判する年長者。

思い当たるところ、ありますよね。
だから仕方ないよね、という話ではないですが、若者を批判するのも違う。
この本は、あるべき姿を示すのが趣旨ではなく、若者を理解し、若者に合った接し方を理解するための本ですので、若者のトリセツとして受け止めればいいわけです。

真逆の本を思い出した

ここまで書いていて、以前読んだ「採用基準」という本を思い出しました。
自分で考えて、自分の責任で行動する、リーダーシップの重要性を書いた本です。

上司の言うことを全部聞くヤツはダメ。そのたったひとつのシンプルな理由。「採用基準」レビュー

伊賀泰代さんの書籍「採用基準」を読んでみたら、実はリーダーシップの重要性を説いた話でした。リーダーシップというものをもっと気軽にとらえる助けにもなります。

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バリバリの草食系から、いきなり自己主張やリーダーシップを要する世界に放り込まれても、順応できるわけがないですが、やっぱり徐々にリーダーシップ発揮へ行くしかないわけで。いつまでも、他人に決められた人生を生きるわけにはいきませんからね。
ただ若者に対し、「なぜ君らはリーダーシップがないんだ」と言ってるだけじゃあ、ギャップは埋まらない。やっぱり僕らおっさんがまずはこの本を読んで、理解するところから始めるのがいいんじゃないかな。軽く読めるし、おすすめです。

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