書評 考察・意見

経営書嫌いにこそ読んで欲しい、経営本。「三位一体の経営」レビュー

あなたは、経営者ですか?

ほとんどの人が、違いますよね。私もただのサラリーマン。だけど、とても面白い経営本に出合いました。

「経営」の何が面白いのか

私は数字に弱く、財務諸表の読み方なんて、何度チャレンジして挫折したことか…。もう理屈じゃなくって、とにかく興味が湧かないんです。当然、経営がどうのこうのなんて、関心を持つはずもありません。ただ不思議なことに、10年も様々なビジネス書を読んでいると、ちょっと変わってくるわけです。
本当に興味本位で「うちの社長は、会社をどういう方向へ導こうとしているのか」ってことを、面白がって推測するようになるんですよね。例えていうなら、サッカーの試合みたいなものです。サッカー好きな人って、今日の選手の並び(フォーメーション)を見て、「監督は今日の試合、こういうサッカーをやるつもりだろう」みたいなこと言うじゃないですか。ああいう感覚に近いですね。

会社について言えば、社長から今後の大まかな方針が示された時に、「あぁ、社長はあっちへ行きたいんだな」なんて予測する。その数か月後に、もう少し具体的な指示が降りてきて、「やっぱり!!俺の思った通りやん!」とかちょっと嬉しいわけです。私はその嬉しさのためだけに、経営に関心を持ち出したと言っても良いでしょう。まあまあ不純ですが、自社の経営に関心ないよりは良いんじゃないかな。そんな時に、この本を薦めていただきました。

各方面で絶賛のようなので、経営に関心のある方はもう読んでいることでしょう。でも私はこの本、経営に興味のない人にこそ読んで欲しい。そう、私のような人です。

どういう本か

ごく簡単に言うと、「会社は経営者のものじゃないし、株主のものでもない。だけど従業員だけのものでもない。私たちは普段、この3者は対立していると思っている。でも、3者がみな幸せになる経営があるのだ。それを目指しましょう!」という本です。それだけ聞くと、青い理想論だなぁ、なんて思っちゃうわけですが、この本は、その理想を実現する方法を、地に足のついた形で説明してくれます。そりゃ高い理想ですから、のほほんと実現できるようなもんじゃない。筋の通った見通しと大局観、シビれるほどのリスクテイクなどが必要になります。ただ、少なくとも道はある。その確かな道を示してくれる本なのです。抽象的過ぎて、何言ってるかちょっとわからないですね、すみません。
著者は、元経営コンサルタント。そして、現投資会社社長。理想の経営の実現方法について、その経歴をフルに生かした説明がされています。つまりね、経営を「額の経営」「率の経営」などタイプ別にしっかり場合分けし、それぞれの問題点を示し、選ぶべきタイプを提示。(選ぶべきタイプってのは、複利の経営と呼ばれるものです)。その選ぶべきタイプについて、ひとつひとつ、実現へのハードルを解説していく、という具合です。説明が下手ですみません。やっぱり抽象的にしか説明できないので、詳しくは本書を読んでいただくとして…。とにかく「ただの理想だと思った経営が、この本を読むとできそうな気がしてくる」レベルで具体的です。すごいよね。

この本の何が面白いのか

たぶん、多くの経営者ですら分かってない「基本のそのまた基本となる考え方」を、この本は教えてくれる。

『何のために会社を経営するんだよ!世の中を豊かにするためだろ!?だったらこういう考え方に基づいてやらないと、逆に世の中を貧しくしてしまうぞ!これは経営者にしかできないことなんだ。あんたたちがやらなくてどうすんだよ!』

そういう愛と熱量が詰まっているのです。いや、暑苦しい本じゃないですよ。むしろ穏やかに丁寧に説明してくれる。だからすんなりと読めます。でもね、最後、ほんの数ページ、すごい熱量、「三位一体の経営」への思い入れの強さが、ドカーンと来るんです。もう最高の終わり方ですよ。胸が熱くなります。胸が熱くなる経営書って…やっぱすごいな。

この、胸が熱くなる感じのためだけに読んでも、じゅうぶん面白いと思うのですが…

経営者以外にとっては趣味の書なのか

やっぱり「俺、経営者じゃないし、カンケーないわ」って人、多いと思うんです。それはそれでもいいと思う。でも私は今、「この考え方を、我が家の運営に取り入れたらどうなるだろうか?」と考え始めています。複利の経営をする家庭。うまくやれば、豊かになれるはず。

そんなわけで、経営者になるつもりのない、世のおとーさんおかーさんにも、お勧めです。まぁ普通のおとーさんおかーさんに勧めるには、ちょっとマニアックだけどね。

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