
正解がない時代、と言われてだいぶ経ちますね。だけど、いまだに僕らは正解があるていで教えているんだな。
この本を読んで、そんなことを感じました。
どんな本か
スペインでサッカーのコーチをしている方の、自伝本です。しかしこれが、ただの自伝ではない。
いかにして、今の教え方に至ったか。どのような場面で、どのような取り組みをし、誰と話し、何に気づいたか。
気づきを基に、教え方をどう磨いてきたか。が中心に説明されています。自伝というよりは、佐伯コーチがいかにして出来上がったかという感じ。
これが素晴らしい。サッカーの選手育成って、あらゆる教育分野でもっとも進んでいるのでは、と思えてきます。
ゴールを奪うという目的、結果が明らかになっている。それは動かない。
そのうえで、選手個々が何を見て、どう判断し、どのように動くか。
「自分で考えて動く」選手はどのように育てたらよいか。
こう書くと、別にサッカーだけの話じゃないと分かりますよね。そうです、すべての教育者の参考になる。もちろん、親も教育者に含まれます。すべての親に読んでほしい。きっと役立ちます。
教育は何を目指すのか
みなさん、刺さるところはそれぞれだと思いますが、私にとってこの本でもっとも良かったのは、サッカーで「レギュラーの11人にだけ目をかけていないか?」というところ。
公式戦に勝つ、ことを至上目的としたら、それでいいわけです。レギュラーメンバー間の連携、戦術理解をもっとも深める。それが勝つために最も近道でしょう。せいぜい、ベンチ入りメンバーまで。
だけど、違うだろ?
育成年代を教えるなら、「それぞれの子がもっとも伸びる」を目指さなきゃダメだろ?という話なのですね。そのためには、「こうしろ、と教えたことを飲み込み早くできる子だけを熱心に教える」じゃない。
ここ、結構大事です。
子供のサッカーの指導者はもちろん、親の普段にも言えること。
たとえば勉強で、「明日のテストでいい点を取ること」だけ目指した勉強をさせていないか?
本当のゴールはなんだ?数年後に行きたい学校へ行くことだろ?
もっと言えば、そこでもなくて、「わが子が幸せになる」ことのはず。そのために、「自分で考えて道を切り開けるチカラをつける」ことのはず。
そういった視点をくれるのが、この本のいいところです。プロサッカー選手を育ててなんぼのサッカーアカデミーなのに、サッカーがうまくなることじゃなくて、選手個々の能力を伸ばすことに力を入れている。
だけど結局それが、良い選手を育てることになって、ビジネスとしても回っていく。サッカー界も発展する。
すばらしいやり方だし、このやり方で結果が出ている、ということはすごい希望になります。すぐ真似しなきゃ。
正解はないが、結果はある。
結局、正解がないなんて今の時代、みんなが分かっている。だったら、「正解を教える教育」から脱却しなきゃいけないのに、いまだに教える側は「正解を教える」人ばかり。そういうことなんですね。
正解がないなら、教える側はどうすりゃいいんだ、と思ってしまいますが、それはこの本や、前回レビューした「答えを教えない教え方」をぜひ参考にしてください。これもまた、希望が持てます。
正解はないけど、成果がでる/でないという結果は明らかになるわけです。これは正解のない時代だって変わらない。
ってことは、少なくともフィードバックはあるわけですね。自分のやり方がよかったかどうか。
かといって、今の教え方がいいかどうか、結果が出るまでわかりません、じゃ困る。結果は出したいし。
そこで、これ。「ダメな思考パターン」。どうしたらいい結果が出るか、それは毎回考えていかなきゃいけませんが、「ダメな思考パターン」というNG集はあります。これだけで結構参考になりますので、転記しておきます。かっこ書きのあたりは、私の解釈を含みます。
- 全か無かの思考
- 行き過ぎた一般化
- 心のフィルター(バイアスや思い込み)
- マイナス思考
- 論理の飛躍
- 拡大解釈・過小解釈
- 感情の(短絡的な)理由付け
- 「すべき」思考
- レッテル貼り
- 誤った自己責任化(外への働きかけの放棄)
「すべき」という言葉は私も大嫌いで、危ない言葉だなあといつも避けていますが、他はできているかどうか、自信がない。
結局、この本のタイトル「本音で向き合う。自分を疑って進む」と併せて、NG集を気を付ければ、選手や子供のありのままを歪みなく見つめ、それぞれに合った対応ができていくのではないでしょうか。簡単じゃないだろうけど、やってみよっと。
この本、おすすめです。