書評 考察・意見

皆がリスキリングする時代、スキルを高めるよりも大切なことがあった。書籍「アンラーン」 レビュー

さて、いきなり質問です。

2023年シーズン プロ野球 中日ドラゴンズは2年連続最下位ながら、名古屋ドームの観客動員数は続伸、とのこと。
いったいなぜでしょうか?まずは推測してみてください。

2年連続最下位中日の観客動員はなぜ「大入り」だったのか? 本拠地関係者も驚き、ファンの声は…
https://www.jiji.com/jc/v8?id=20231030baseballstories

本当の原因は上の記事を読んでも分かりませんが、ここで情報をひとつ。なんと「2023年観客動員数は、前年比でセ・リーグ全チームとも増えた」とのことです。この可能性、思いつきました?私は思いつかなかったです。

いきなりこんな話をしたのは、「思考のクセ、枠」を感じてもらうためです。私が少年時代に中日ファンだった、てのもあるけどね。
それはさておき、難しい問題の解決法に迫ろうとした時、これではマズイと思いませんか。問題の原因を探すのに、最初っから検討外にしてしまっている部分がある。このクセを克服したいと思っているのですが、役立ちそうな本を今回、読みました。

アンラーンとは何か

アンラーンとは何か。learnは学ぶ、unはその打ち消しということで、「学んだものを取り外す」みたいなことです。これだけだと、何が良いのかわからない。「学んだことを忘れるなんて、マイナスでしょ」と思いますよね。
しかし、学んだことがいつもプラスとは限らない。むしろ、学んだことが邪魔になる場合があるのです。

想像してみて下さい。あなたは部屋の模様替えをしました。家具も大幅に配置を変え、気分も一新。引っ越した訳じゃないのになんだか新しい生活が始まりそうでちょっと楽しい。

だけど、ものを取り出そうとして困惑する。ハサミどこやったっけ?サインペンは?銀行の通帳は?
つい、いつも置いてあったところに行ってしまいます。
それが続くと、毎回思い出すのが大変でイヤになり、もう面倒だから結局前と同じ場所に戻したり。模様替えはなんだったんだ。

これが、アンラーンできないということです。以前のやり方から抜けて新しい環境に適応することができない。
逆に言えば、模様替えした新しい部屋に慣れて、どこに何があるか覚えなおすこと。これがアンラーン。
模様替えに例えると「そんなやつおらんやろ」ってなりますけど…仕事全体でみたら、思い当たるのではないでしょうか。

  • 「数年前にこれでライバルに勝った」からといって、全く前提条件の異なるコンペに根性論で突っ込む上司
  • 新しいシステムを入れたのに、慣れないからと前のシステムを使い続ける現場
  • 転職後も、前職のやり方を貫こうとするビジネスマン

小さいことなら、みなさんにも思い当たるのでは。そんな時に必要なのは、「学んだものを取り外す」こと。昔のやり方がダメなら、それを捨てなきゃならないのに、そもそも「前のやり方を捨てる」という発想にならない。

というわけで、本書では、アンラーンとは何か、から始まり、その重要性、具体的な実践方法例などが書かれています。対話形式で軽く読みやすいので、とても良い。さらに、引退したスポーツ選手のその後をどうするか、という具体例もよく出てくるので、アンラーンとはどういうことなのか、が理解しやすいです。

どうアンラーンするのか

でも一部の人には「そんなこと知ってる」 と言われそう。前の職場での経験が、新しいところで活きるとは限らない。昔のやり方がいつまでも通用するとは限らない。皆知ってる。

だけど、です。結局、前の職場でのやり方を貫いていませんか。通用しなかったら、自分が転職を間違えたのだ、と思ったり、周りがおかしいと思ったり。
でも本当はなんとなく分かってる。前のやり方が、新しい職場で通用するほうが珍しいんだってこと。

だったら、まっさらな状態からやり直すしかないでしょ。
さてあなたは、まっさらな状態に戻れるか。アンラーンできるのか。

ここで嬉しいのが、アンラーンのやり方ってそう何パターンもないこと。ひとつのことについて出来て、それを意識したら、たぶん他のことにもできていく。だから簡単なことからアンラーンしてみよう。と本書は教えてくれます。例えば、いつもと違う店でランチする。通勤経路を変えてみる。気分転換じゃないです。以下のようなことを鍛えるってこと。

  • 「本当にいまのやり方が最適なのか?」という視点をトレーニングする
  • 「あれ?ベストだと思っていたやり方にもっといい方法があったわ」という体験をする
  • 改善出来るかもと思ったなら一歩踏み出してみる行動力

ささやかなことでアンラーンの成果を感じたら、他のことにも、仕事にも展開していく。これ本当に効果的です。いままでより一段上から物事を観られるようになる。

快適でないところへ飛び込み慣れる

前述のトレーニングを続けると、アンラーンが習慣化してきます。
これを他の言葉で言い表すならば、「快適じゃないところに飛び込み慣れる」ということです。逆から言えば「快適なぬるま湯から抜け慣れる」ということ。こういうと、その先に成長しかない、って感じがしませんか。楽しくなってきますよね。

そしたらもうあなたは、新しい環境で上手くやっていく、最も大切なスキルを手に入れたということ。上手くいくのは時間の問題。

職場を変わらなくたって、環境はどんどん変わっていくんだし、転職する人もしない人も、ぜひ、アンラーンという手段を手に入れましょう。
この本、おすすめです。

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