書評 考察・意見

バンクシーの額縁はもっとデカいのだ。バンクシー作品の、本当の楽しみ方を教えてくれる本。【書評】バンクシー 壊れかけた世界に愛を

バンクシー。言わずと知れた、覆面ストリートアーティスト。
火炎瓶の代わりに、花束を投げようとしている青年 とか、作品だけで楽しめるから深く考えたことなかったけど、たまたま見かけて読んだこの本、かなり面白かったです。バンクシーの作品を、何十倍も楽しめる手助けになる。

どういう本か

バンクシーの解説本。と言ってしまえばそれだけなのですが、それで片づけるにはあまりに惜しい。
まずこの本、アートに興味がある人 向けじゃなくて、普通の人向けに書かれています。
だから、例えば美術館でよくある解説みたいな、「この木がこういう色で書かれているのは、画家の悩みをこう表していて・・・」みたいな話じゃない。

そもそも、なんで街中に落書きみたいな形で作品を残すのか。
壊されたり、消されたりする可能性が高いのに。
バンクシーに限らず、街中にストリートアートを残す人は何なのか。悪ガキの落書きと何が違うのか、あるいは違わないのか。

みたいなところからひも解いてくれます。
これが非常に面白い。美術館にあるものだけがアートじゃない。というか、アートって何なの?アートである、ということは偉いことなの?みたいな話まで及んでいきます。

話の展開に沿ってそこまで考えだすと、バンクシーが何を表現したいのか、が少し見えてくる。
逆に言えば、スプレーで吹き付けられた絵を見ているだけでは、バンクシーの作品を見ていることにはならない。と気づく。

バンクシーの額縁はバカでかい

どこに、何が書いてあるか。そこまで見て初めて、バンクシーの作品を見ていることになる。
言い換えれば、作品のフレームがものすごくでかい。

ロンドンの動物園のシャッターに現れた作品は、動物園にあるからこそ意味があった。
パレスチナの分離壁に書かれた、花束を投げる青年は、その壁にあるからこそ意味がある。

でもちょっと待て。それだけか?
ロンドン動物園のゴリラの絵は、何を訴えているのか。世界中の動物園まで含めて、檻の中に入れていることを問題提起しているのではないのか。
パレスチナの青年の絵は、街とその惨状、隔離壁ができたことそのもの、過去や未来の歴史まで含めて見てほしいのではないのか。

絵を単体で見ても楽しめるけど、その絵がそこに、今、ある理由まで含めて見てこそ、作品を見ていることになる。
普通の絵なら「ここからが作品です」という額縁(フレーム)があるけれど、バンクシーの作品には額縁がない。というか、額縁のスケールが違う。
仮に、バンクシーの絵が美術館にあるとすれば、「屋外じゃなくて、わざわざ美術館の中にある意味」まで含めての作品だということになる。

そんなことが分かってくるような気がしました。
じゃ、東京に現れた、傘を差したネズミ作品はどこまで考慮に入れて見るものだろうか?

バンクシー作品の楽しみ方がぐっと広がる

そんなわけで、この本を読むと、知識というよりはバンクシー作品の見方が分かって、世界が広がります。おすすめです。

あとはどうでもいい話ですが、バンクシーのモチーフにネズミ(ドブネズミ)が多いことに、ちょっと思い当たるところがありました。
ブルーハーツの名曲「リンダリンダ」、言わずと知れた歌い出し。

ドブネズミみたいに美しくなりたい。

うまく言えないけれど、なんか共通するところがある気がします。
テクノロジーを駆使した没入型アートもいいけれど、自分で額縁を設定する、バンクシー作品のようなものを観る視点も失いたくないですね。

-書評, 考察・意見