永遠に生きるかのように学べ

ほぼ読書、ちょっと音楽、このごろキャンプ。

アートとは、アート思考とは、そういうことだったのか。りんごを例に考えてみる。

 

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最近話題のアート思考。エイミーウィテカー氏の本を読んで、ある程度分かった気になっていました。が、アート思考って、そんな程度のものじゃなかったんです。これを読んで、よくわかりました。むちゃくちゃに面白かった。

どういう本なのか

要約してしまうのがもったいない。そういう本です。なぜかって?この本において大事なのは、書いてある中身だけじゃないから、なのです。「この本を読むという体験」含めて、この本が伝えたいことなのです。
って言ってわかる人はいないわな。表現力不足ですみません。例えば、映画。新しい映画も、半年や一年待てば、最近は家で観られるようになります。中身だけ見たいなら、それで十分のはず。でも、みんな映画館に見に行くでしょ?あれはなぜ?
そう、映画の中身だけでなく、「映画館に行って見る」という体験含めて、映画を見るということだから、ですね。

それに近いんですよ。書いてあることだけなら、要約を読めば大体つかめる。だけど、この本は書いてあることがすべてじゃない。だから要約ではダメなんです。

というわけで今の私は、本を紹介してるのに、「読まなきゃわからない本です」という、身もフタもないことを言ってるわけです。料理番組で「どんな味ですか?」と聞かれて、「食べたらわかります」って言ってるようなもんだな。

これで終わったのではせっかく読んでくれた人に申し訳ないので、もう少し頑張って、私が最も印象に残った部分を、私なりの解釈でご紹介します。私なりの解釈なので注意してくださいね。間違ってても著者の若宮さんにクレーム入れないように。

アートとは何なのか

この写真を見てください。

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これは、何でしょう?

ヒント。写真中央の細いものは、消しゴムのカスです。

さて答えは?

「手首に乗った消しゴムのカス」?
確かに、写真に写っているのは、手首と消しゴムのカス。

 

でも。考えてみてください。なぜ、消しゴムのカスが手首に乗っているのか。消しゴムのカスってことは、何を消した痕跡なのか。この写真を撮った人は、何を表現したかったのか。

例えば、誓いの言葉を書いて、それを消したカスだとしたら。それを手首に乗せてるわけは?
そう考えるともはや、ただの「手首に乗った消しカス」ではないわけです。

どうやら、これがアートというものらしいのです。つまり、「見たまんま」ではなく、これは何なのか、どういう意味があるのかをまっさらな心でとらえなおす

 アート思考とは何なのか

上記の話をもう少し分かりやすく書いてみます。

あなたは、一枚の油絵の前にいるとします。「あなたが見ているものは何ですか?」って聞かれたら、何と答えますか?「絵ですよ」って答えますよね、普通。本当に見たまんまを答えるなら「絵の具の塊」なわけですが、そんなこと言う奴いないでしょ。

そう。皆、アートなんて難しく考えなくても分かってるんです。ところがしかし。これが消しゴムのカスだったり、有名な既製品の小便器(デュシャンのやつ)をアートですって見せられると、「アートってわかんねぇなあ」となるわけです。それはなぜか。

それは、正解を当てようとするからじゃないでしょうか。作者は何だと思わせたいのか?的外れな答えを出して恥かくくらいなら、分かんないことにしたほうがマシ。
でもね、本当は当てる必要なんて、ひとっつもないんですよ。なぜなら、作ったアーティストだって「これ、何だと思う?どういう意味があると思う?考えてみてよ」って問いかけてるだけなんですから。

そして、この考え方を取り入れるのが、この本で言うアート思考(アートシンキング)。目に映るものや、体験したことを、そのまんまじゃなく、「これって本当は何なのか?」を考える。とらえなおすといっても良い。

例えば、ひとつのリンゴを見ても、アート思考なら見る人によって答えはバラバラで当然なのです。ちょっとやってみましょう。

ロジカルシンキングなら

これは赤いですね。直径10センチ前後ですね。重さは300グラム前後ですね。リンゴの香りがしますね。作り物ではないですね。だからリンゴです。

誰が見てもこういう答えになる。

デザインシンキングなら

これを置いたのは誰ですか?あなたですか。あなたはこの物体をどうしたいのですか?これから遊びに来るお友達の子供にあげる?なるほど。なぜこれをあげるのですか?その子がリンゴが大好きだから?なるほどなるほど。これは「お友達の子供を喜ばせる道具」なのですね。

対象の所有者によって答えは変わる。

アートシンキングなら

お。ここにリンゴみたいなものがありますね。いいですねぇ。アンティークのテーブルにわざわざひとつだけリンゴを置いてあるということはアレですね、〇〇というミュージシャンの3枚目のアルバム、あのジャケット写真をモチーフにしたインテリアというわけですね。

置いた人にはそんなつもりはないのに、見る人によって解釈が変わる。

 

そういうことなんですよ。たぶん。このリンゴの解釈は、私がいま思いつきで書いたもの。絶対正しいとは限らないけど、まあ私は、アート思考とはそういうことなんだと理解しました。

アート思考の何が良いのか

見る人によって解釈が変わる(変えて良い)ってことはですよ。たとえば問題が一つでも、問題を見る人の数だけ解決方法があるってことです。当然、いままで誰も作らなかったような解決策ができる。それが良いものになるとは限らないけど、イノベーションってそういうもんでしょ。産み出すのが最も難しいのだから。

だからイノベーションが求められるこの時代、アート思考が台頭してきたというわけなんですね。考え方自体は、ずっと前からあったものだと思うんですけど、名前がついてみんなに認知され、重要性も認識されるようになった。

 

いかがでしょう、アート思考。面白そうでしょ?面白そうだけど、ビジネス書読むの面倒だなあという方は、こちらの絵本をお勧めします。私が上に挙げた部分の、そのまた一部だけは、似た体験ができると思います。

もちろん、「ハウ・トゥ アート・シンキング」は、物の見方について書いてあるだけではありません。他にも感心すること、示唆に富んでいることが満載で面白いし、最初あたりに書いたように、新しい読書体験がつまっています。強力におすすめ。

photo credit: duesentrieb Auch ohne Corona-Krise immer menschenleer via photopin (license)